読書記録(2020年8,9月)

行動を変えるデザイン

元々ファスト&フローとか予測どおりに不合理とか行動経済学の話が好きなので、それをプロダクトにどう適用していくのかが気になって読んだ。行動変容が必要なアプリをつかってもらうために、どういった障壁があり、人の行動特性(ここが行動経済学の部分)を踏まえてその障壁を超える人を増やすにはどういうことをしたら良いかということが書いてある。そこそこページ数が多いが、後半は前半でいったことの繰り返しが多かったように感じた。

コンテナ物語

流通コストを大きく下げたコンテナ技術がどのような経緯で使われるようになったかという話。今まで個別に詰めていたものをコンテナに詰め替えるだけでは当然済むわけではなく、コンテナを効率的に使用するための船や港の設計、この技術により職がなくなる港の労働者や労働組合との交渉やコンテナの規格についての取り決めなど、有効であるとわかっていてもアイデアが実際に広く使用されるまでには多くの障壁があり労力と時間が必要。はんこがなかなか撤廃できないのと同じような事象かな思う。

OKR

OKRは目標管理方法の1つでObjectives(目標)とKey Results(指標)のこと。前半部分は小説で後半部分が解説。基本的には実施することに優先順をつけることと、4半期に1回という短いサイクルで行うこと、また人事考査と切り離して達成が半々くらい目標を設定することで、各個人の能力を発揮しかつストレートに会社業績に直結させるような仕組み。人事考査とOKRが切り離されている、かつ組織に楽をしようとしている人がいない等の性善説が前提としてあるので、自走力が高い人が多い組織では有効そうかなという印象を受けた。

Pythonクローリング&スクレイピング[増補改訂版] -データ収集・解析のための実践開発ガイド

今までスクレイピングはweb上の資料をかいつまんでやっていたが、本著をもっと前に買っておけばよかった。スクレイピング自体の説明に留まらず、unixコマンドを用いた基本的なスクレイピングの考えたかや、python自体に関する説明、サーバにおけるスクレイピングコードの運用まで網羅されており一連の流れが理解しやすかった。

たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング

主題として適切なn=1を選定しその人に合うように解像度を上げて戦略を考えるという話がある。以前読んだ「平均思考は捨てなさい」にも書かれていたが、セグメントで考えてしまうと特徴は平均値にまとまるが、実はすべての要素が平均的な人物というのは存在しないために、ありえないペルソナをつくる可能性もあるので、理にかなっていると思った。ただ同時にn=1の選び方を誤ると筋違いの仮説を立ててしまう可能性があるので、そこは丁寧に行う必要がありそうだなと思った。 またマーケティングという言葉の意味を今まであまり理解していなかったが、売り上げを最大化するためにプロダクトをいかにして顧客に届けるかという活動であり、必要であればプロダクト側への働きかけも行うものだということを理解できた。

われわれはなぜ嘘つきで自信過剰でお人好しなのか

進化心理学という分野の本。要は人間が遺伝子を残す上で、嘘つきで自信過剰でお人好しであることが重要な要素だったからであるという内容。 その性質のためにリーダーに適任だと思えた人が合理的に考えると不適であったり、立場がその人の性質を変えてしまったりもするので、 この人類のもつ特性を踏まえた上で、それが現在の世の中において必要なものなのかどうかは考える必要がある。

UNIXという考え方―その設計思想と哲学

UNIXという考え方―その設計思想と哲学

UNIXという考え方―その設計思想と哲学

  • 作者:Mike Gancarz
  • 発売日: 2001/02/01
  • メディア: 単行本

大きな1つの作品を作るのではなく、小さな部品の組み合わせを考える、試作をできるだけ早く作る、その時の最大効率を考えるのではなく、周囲の環境が変わっても使用できるような移植性を重視する、等のunixの設計思想はビジネスの展開の仕方と似ているなあと思った。

「意思決定」の科学 なぜ、それを選ぶのか

表が出続ける限り続けられるコイン投げのように、極めて少ない確率で極めて大きな利益が得られるような事例では期待値が発散するというサンクトペテルブルクパラドックスを例としてリスク回避性などの人間の持つバイアスを効用関数として定式化し意思決定の説明がされている。 この本では内容の検証を実験ベース行なっているが、個人的には大規模データに適用することに興味がある。 ちなみにサンクトペテルブルクはロシアの西側、北欧に近い場所に位置している。

確率思考 不確かな未来から利益を生みだす

長年ポーカーで生計を立てていた著者が、ポーカーで学んだ確率的な意思決定についての思考を、ポーカーだけでなく政治やスポーツの事例について記している。意思決定を行う場合、選択によって確率を考えることに加え、過去より現在を重視する、結論ありきで理由を考える、という人間自身のもつバイアスを考慮する必要があるという話。可能な限り公正な視点であらゆる確率とその結果を考えた方が良いという話。