読書記録(2020年12月,2021年1月)

あなたの人生の科学

二人の主人公の一生を例として、物語形式で仕事や結婚などの各エピソードにおいて なぜその人はそのような行動をとるのかを、特に無意識の部分に焦点を当てて解説を行なっている。 参考文献も多く引用してあり認知科学や心理学等使用されている知識は多いが、ストーリー形式だったことで内容が理解しやすかった。他者と協調できる人の遺伝子が残りやすいことを考えると、人はやっぱり社会から逃れることはできなのかなあと思うなどした。

ワークマンは 商品を変えずに売り方を変えただけで なぜ2倍売れたのか

データ分析業界でたまに話題になるワークマンについての本。 データは重視するがいわゆるAIと呼ばれる高度なものは使用しないという部分が気になっていたが、ブラックボックス的な物を使用すると社員が考えなくということで納得がいった。正直若干名のスーパープレイヤーがいるよりこういう方針の方が事業的には安定する気がする。戦略立案から店舗オペレーションまでの仕組みがうまく考えられているという印象で、取引先やフランチャイズとのやりとりも性善説的であり、派手さはないが無駄な仕事の部分が少なそうだなという印象を受けた。

マンスキー データ分析と意思決定理論

主に政策に関する意思決定に焦点をあて、よく使われる点推定の分析は仮定の影響が大きく、分析者によって結果に大きな違いが出るケースもあるので、 区間推定と複数の意思決定基準を用いた仮定の影響が少ない手法を提案している。ボリュームが多く内容理解できいない部分も多いので機会があれば再読するかも。

データサイエンティストの育て方

データサイエンティストの育て方

データサイエンティストの育て方

データサイエンティストと呼ばれる人は一般的にはできないことができたりする反面、皆があたりまえにできることができることができなかったりするので、 長所を活かせるような環境整備やマネジメントをすべきという内容。データサイエンティスト云々というよりも、業務形態が旧来的なトップダウンではなくボトムアップ的なものを求められることが多くなってきたのではという気もする。また個人的にはデータサイエンティストよりも、著者のようにデータサイエンティストが生きるような仕組みづくりや仕事の調整ができる人の方がよっぽど希少だと思う。

カニズムデザインで勝つ ミクロ経済学のビジネス活用

ノーベル賞でオークション理論が話題になっていたのにかけらも知らなかったので読んでみた。対話形式で読みやすく、ざっくりオークションにはどのような種類があり、それが実務上どのようなケースに使用できるかということを知ることができた。選挙の話で、今の一人一票性だと同じような特性の候補者で票割れが起こるので、それを防ぐために各候補者を段階評価するような方法が提示されている部分が興味深かった(この方式に変更することのインセンティブがないことを含めて)。

世界が動いた「決断」の物語 新・人類進化

ビン・ラディンの暗殺等、重要である事柄に対する意思決定の確実性を高めるために、あえて異なる意見を示すレッドチームを作って現状優勢である考えと真逆の考え方をぶつけてもらうなど、多人数でより多くの結果を想定できるようにするアンサンブル的な考えが用いられている。 最後の方では小説を読むことで、他人の視点を自分の意思決定に加えることができるというやや飛躍的な考えもあったが、よく考えるとそれほど否定する要素もないかなと感じた。

勉強の哲学 来たるべきバカのために

/メイキング・オブ・勉強の哲学

タイトルから自己啓発に近い内容かと思って読み始めたが、完全に哲学よりの内容でいい意味で裏切られた。 なぜ勉強をするのかというと、ノリで動いている、つまり無意識で周りに合わせている状況に対してなぜそんなことをしているんだ?というツッコミ(アイロニー)をいれ、さらにそのツッコミに対していやそれはアレと同じでは?というユーモアで思考の領域を広げ、そのままだと際限がないためにどこかで止めるために享楽、つまり自身の特性によってやめ時を決定するという話。

この本における勉強は単に机に向けたものに限定しておらず、現状の事象を分解し、 自身の考えでその事象を再構築するために必要な汎用的な技術というイメージ。

メイキング・オブ・勉強の哲学は勉強の哲学という本の制作自体に関して書かれているが、 勉強の哲学という本自体が本文中で述べられているアイロニ→ユーモアー→享楽による切断を経て作成されていると感じられて理解が深まった。

良い戦略、悪い戦略

歴史上や近代の事例を用いて良い戦略と悪い戦略についての説明がなされている。 一例として紀元前のカルタゴの武将であるハンニバルがローマ軍を破った事例が記載されているが、 ここでは戦略を用いるということが一般的ではない時代において、戦力を分散し撤退前提の囮を用いることで圧倒的な勝利を手にしている。 他の事例についても根源的な考え自体は同じで

  • 目標と戦略を取り違えず、具体的な行動に落とすところまで考える
  • 自身の経験ではなく客観的に当たり前となるべきことを考える
  • 戦略を実際に実行する

ということが良い戦略においては重要となるらしい。