読書記録(2021年4,5月)

スマホ

現代人はスマホ(主にSNS)に脳をハックされているということを科学的に説明している本。 facebook等のSNSはユーザに多く使ってもらうことで利益を出すモデルであり、そのために大量の資金とテクノロジーがユーザの使用されている。 幸福に関する本を読むと大抵SNSはやめましょうという話が出ますね。 (逆に地域分断型の狭いSNSを作ったら幸福度は上がったりしないだろうか?)

デジタル・ミニマリスト

上記のスマホ脳と内容は類似しているが、この本ではその内容を踏まえた上で、私たちはどうしていくべきか?ということまで書かれている。 スマホはデジタル・スロットマシンという例えは印象に残った。 端的にいうとスマホを触らない期間を設けてその時間でできることを新たにさがし、SNSは最低限必要なものだけ残しましょうという結論。

ストーリーとしての競争戦略

経営戦略をどう考えてつくるべきかという本で、内容も筋が通っていて面白かった。 こんな感じでこの会社はこういう構造でやっていきます、というストーリーがあると社員としても働きやすいなと思った。 例えばスタバのようにフランチャイズ形式ではなく直営店形式にするというような、部分的に見れば不合理だが全体で考えると合理性がでるようなキラーパスをつくるという部分は興味深く、確かにこれがあると他者の参入難度が格段に上がると感じた。 あと今は戦略が綺麗に描ける企業も最初からこの形であったわけではなく、試行錯誤や失敗を経てこの形になっているので、現実で戦略パスが繋がらない箇所が出てきたら適宜対応・修正していく力も必要なんだろうなと感じた。

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

コンサルの失敗談の話。最近はDX、少し前はAIのように、有名なフレームワークやソリューションをただ導入するだけではうまくいかないよという例が書かれている。 おそらくビジネスは科学ではないということが失敗の根幹であり、例えば部署間の連携を強化するなど、銀の弾丸のようなものはないので現場の状況やちゃんと観察して障壁となるものを一つ一つ改善していくのが結果的に最も効果が出るらしい。 問題をコンサルに丸投げすればなんとかなる思っているクライアントサイド側にも問題があり、 コンサルを使うのであれば、単純に実行リソースが不足している場合や第三者の意見や介入が必要なケースにすべきということだった。

闇の自己啓発

読書会の体裁をとっており、お題となっている本やそれに関連する知識(主に哲学や人文)がない私には内容の理解が難しかった。 ハーモニーとかのSF系の話だけは理解できたが、その部分も少し技術の発展を楽観視しすぎているように感じた。

腸科学

腸にはマイクロバイオータと呼ばれる微生物が数多くおり、その微生物の状態によって腸だけではなく、精神も影響を受けるという内容。健康に関わる科学の話は外乱が多く効果検証が難しい印象があり、著者の風邪の季節以外は微生物を摂取するために土を触った手を洗わず食事をとるなどの例は少し行き過ぎでは?と思う点もあった。個人的な所感としては、人によって合う微生物が異なるので、食物繊維等、食べると健康に良いと呼ばれるものを探索的に試していくのが現実的かなと思った。

小説家になって億を稼ごう

小説家として億を稼いでいる著者による実践的な本。小説の書き方的な本は数多くあるが、この本で特徴的なのは、 出版社の担当との付き合い方や映画化時の契約交渉等、本が出来上がった後に具体的に稼ぐための仕組みをどう作るかということにページを割いている点である。例えば執筆者から見たら担当は一人だが、担当からすると執筆者は複数人いるため意識の齟齬が起こりやすいため、客観的な視点をもつべきという考えはこの分野に限らず必要だと思う。

かがみの孤城

自分が現代ヒューマンドラマ+若干のファンタジーというジャンルが好きなのもあるが、ここ10年ぐらいで読んだ小説で一番面白かった。 主人公達は中高生だが、ささいなことで大きく揺れ動く感情がとてもリアルに描かれており、それを取り巻く親や先生など大人の対応も現実的なもので、両者の視点で自己投影が可能となっている。それに加えて、序盤より孤城とは何でなぜ主人公らはここに集められたのか、という謎に対して伏線が多く張られており、それがだんだんと紐解かれていく後半は展開が気になって一気に読んでしまった。

深層学習の原理に迫る

深層学習は応用利用が進んでいるが、なぜうまくいくのかが証明されているわけではない。 本著はその理由を専門家でなくてもわかるよう、かなり短く簡潔にまとめられている。 この本で説明されるのは深層学習の一部ではあるが、個人的にはVGG16がなぜ16で、15や17ではなぜだめなのか?がわからずNNの理解を進めるのを後回しにしてしまったので、このように理論的な説明をしてくれるのはありがたい。

なぜこの店で買ってしまうのか ショッピングの科学

顧客行動分析の専門家である著者の、現場視点でショッピングの特性を記した本。 20年近く前に書かれた本なのでその部分は割り引いて読む必要があるが、 実店舗に張り付いて長年顧客調査をして得られた知見は現在も不変であるものが多い。

最近は技術の発展によりカメラを用いた導線分析や決済時のユーザ属性の取得もある程度可能にはなってきているが、例えば本で紹介されていた下記の情報を数字だけから見つけるのは結構難しいと思うし、

  • 入口近くにある広告や商品は無視されやすい
  • 混んでいる経路にある商品は購入されづらい

見つけたとしてどう問題を解決するかも実店舗を見てないと考えづらいだろうなと思う。

人はなぜ物語を求めるのか

人は、個別の事象から一般論を帰納し、その一般論から演繹して原因・理由を把握する。 つまり、人は物語を求めるというよりも、人は物語を通してしか事象を理解することができないという方が正しいのかもしれない。 物語を構成するパーツが足りない場合は補完する動きが働くので、災害など偶発性が高いものに関しても、自分が何々したからだと因果を自動構成するし、 論理の飛躍が起こるケースもある。事象を物語に変換するための一般論は自身の信念のようなものが基準となるので、人によって事象の解釈は大きく異なるし、逆にそこさえ変化させることができれば事象に対する自身の受け取り方や反応を変えられる可能性もある。

シン・ニホン AI×データ時代における日本の再生と人材育成

これからのAI×データ時代における世の中の変化が行われていく中で、国としてどういった政策をとり、また教育をしていくかということをデータを元に提案されていて興味深かった。国語の教育は小説等の書き手の理解ではなく、文章を正しく読み取り課題を抽出するという方針にした方が良いという部分はその通りだと思ったし、ひと昔前と比べると必要とされる能力の移り変わりのスパンが短くなっており、より自分で考えるというメタスキルを伸ばすような方針にできたら良いんだろうなと思った。